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a beautiful day for diffusion of a death by exposing it to the elements. 



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後編はこちら。
http://fusohbiyori.blog.shinobi.jp/Entry/96/


人が、暦の上では、
中秋の名月
と呼ぶ、秋の夜のことである。

天頂高く昇ったみごとな満月の冴々とした清冽な光が、澄みわたった空気の粒子を縫うようにして、文次郎のいる谷底を照らし出していた。
さまざまに生い茂る草木が凛として月光に映え、見渡すかぎり一面に真っ白な霜が降り積もったかのように見える。寒さを感じないのが、不思議なほどに思えた。

今ごろ学園ではまだ、名月にかこつけた無礼講が続いていることだろう。誰かがどこからかくすねてきた酒の杯が、屋根の上で大きな月に見守られる生徒たちのあいだを巡っているに違いない。
文次郎も最初は参加していたのだが、酔いが回り始めたところで抜け出し、ひとり、ここまで来た。

当初は、酔い覚ましを兼ねて鍛錬をしようと思っていた。だが、忍者の技の鍛錬をするにしては、今夜の月は明るすぎた。何となく気勢を削がれてしまった文次郎は、舌打ちをひとつして、草原に横になった。

(この程度で志が揺らぐようでは、俺もまだまだだ)
目を瞑ってなお、まぶたの裏にまで月光がほの白く届く。その光の中に全身を投げ出して、文次郎は苦々しい気分になった。虫の音が、あちこちから重なり合って響いていた。

ふと、寝転んだ頭のほうにある、切りたった崖の壁面の影から、人の気配を感じた。
身を起こし、護身用に持ってきた懐の短刀に手を伸ばす。殺気はないようだが、用心するに越したことはない。

気配の主も、文次郎に呼応するかのように動いた。どうやら、こちらに向かってくるようだ。
闇が人の形に練られてぬっと前に押し出されたかのように暗がりから出てきたその人物は、文次郎のいる場所からは、なかなかその顔かたちをはっきりと識別することができない。
文次郎は息を詰めた。

しかし、月光にこうこうと照らされる場所までくると、一転して、今度はそこに艶やかな白銀色が踊ったかのようだった。
仙蔵だった。

「驚かせるな」
文次郎が、全身の筋肉から力を抜いて溜息をつくと

「何の、六年も一緒にいる癖に私だと見抜けぬお前が未熟なのだ」
と、仙蔵はころころと笑った。

仙蔵は軽やかな足取りでさらに文次郎に近づいた。そして、その隣におもむろに腰を下ろすと、仏頂面の文次郎をよそに、どこまでも高く無尽に広がる夜空を、首を伸ばすようにして見上げた。少年にしては繊細な線の喉元が、月光の下に晒け出される。
そのまま、仙蔵は話し始めた。

「みんな、お前を探しているぞ」
「何かあったのか」
「悪酔いした小平太が暴れだしてな、留三郎と八左ヱ門が二人がかりで止めている」
「長次はどうした」
「忘れたか、あいつは下戸だ。とうに潰れている」
「お前は何をしているんだ」
「私に止めろとでも? 六年も一緒にいる癖に、私がそんなことをすると思っているのか」

仙蔵が悪戯っぽく鼻で笑いながら文次郎を見ると、

「……思ってねぇ」
文次郎はまたもむすっとした表情に戻って、そっぽを向いた。

二人はしばらく、無言のまま並んで虫の声に耳を傾けていた。「静か」ではなかったが、むせ返るような「静けさ」が、あたりに充満していた。草木や土の青々 とした匂いが、胸を満たしてゆく。静謐で力強い生命力がそこかしこに溢れてこぼれ落ちそうになっている夜だったが、同時にとてもはかなく、脆くも思えた。

「あのときも、こんな夜だったな。覚えているか?」
突然、仙蔵が沈黙を破った。

「あのとき……?」
とっさのことに文次郎が答えられずにいると、

「まぁ、お前はまだ小さかったからな、覚えてはおるまい」
と、仙蔵はまた、ころころ笑った。
仙蔵はすくっと立ち上がって少し歩き、月光の野原におもむろに両手を広げて立った。

「六年も一緒にいた仲だからな、離ればなれになる前に、私の正体を明かしてやろう」
仙蔵の足元に、仙蔵を囲むようにして竜胆の花が咲いている。澄んだ夜気に染み入るような、鮮やかな藍紫色をしていた。

(……!?)
文次郎の胸を、ふと何か、違和感のようなものがよぎった。
……この花、先ほども、そこに咲いていただろうか?

それにしても……
前々から頭のおかしいヤツだとは思っていたが、ついに……と、文次郎は思わず頭を抱えたくなった。だが、そうは思いつつも、仙蔵のその姿から目を離すことができない。

「お前が確かまだ三つの頃だったか……野原で枯れかけていた竜胆に、水をくれてやったことがあっただろう。私の正体はな、あのときの竜胆だ」

仙蔵の目が、底のほうからぼんやりと紫色の光を帯び始めた、ような気がした。文次郎の口が、あんぐりと開く。いよいよ本格的にワケのわからないことを言い出している。そうなると人間、目つきも変わるものなのか。
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ごんファイ
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