忍者ブログ
a beautiful day for diffusion of a death by exposing it to the elements. 



×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

46巻の長きりに、ついホゲッとなってやった。ネタバレはしていないです。

ところでカメリアコンプレックスとは…

不幸な女性を見るとつい救ってしまいたくなる男性の心理を言う。カメリア(Camellia)とは日本で言う椿の事である。このコンプレックスの語源はアレクサンドル・デュマ・フィス著の「椿姫」のマルグリットである。マルグリッドは高級娼婦として働いており、彼女に青年アルマンが恋をするという物語であり、オペラでも有名である。このため、西洋ではカメリアは罪を犯し贅沢な事を行う商売女の意味合いを持っている。この小説から女性がどんな人であろうと余計な事であっても救い出そうとする男性の心理全般の事を「カメリアコンプレックス」と呼ぶようになった。
(wikipediaより抜粋)

ニャカザイケ先輩はスーパーやドンキ(笑)できりちゃんに「あっちのほうが安い! 今月はウチ(図書委員)厳しいんですから!」などと手を引かれて振り回されるんだけど、そんな状況を幸せだなぁと思っているのがヨイデス。

というようなちょっといい話を書きたいなと思っていたのに、気が付いたらクロザイケになってしまいました。ひとことで説明すると、「共依存を自覚している人たちのヤケッパチな試行錯誤」です。

 夕暮の中に沈んでいく道なりに、咲いたばかりで首を捥(も)ぎとられた白い椿の花が、点々と落ちていた。
それを追った先には、おそらく、ある種の生き地獄がある。

いつごろからだったろうか。きり丸は例えばこんなふうに、手が込んでいるのかいないのかよくわからない真似をして、長次に、自分が体を売るときをひそかに知らせるようになった。
長次は、最初は止めてほしがっているのかと思った。もしくは、そういうさまを見せつけることで、最上級生である自分に、遠回しに金銭的援助を要求しているかもしれないとも。それから、単純に慰めてほしいという子どもらしい理由も、考えられることではあった。

だが、止めてみても、金を与えても、きり丸は同じことを繰り返した(もちろん金は金でしっかり受け取ったが)。慰めることに関しては、どうしたらいいのか今ひとつよくわからなかったものの、行楽に連れ出したり、居心地の悪さを覚えつつ図書室の夜番がてら添い寝してやったりしたこともあった。……きり丸は少し迷惑がっていたように見えたが。

今宵、闇に何だか婀娜(あだ)っぽく白色を滲ませる椿を追っていった先で長次が見たものは、見るからに貧乏くさい武士らしき男に抱かれるきり丸の姿だった。
家のまわりには垣があったが、あちこち破れていて、とてもじゃないが目隠しにはなっていない。折から東に月も昇ってきたので、家の中の様子はさしたる困難もなく窺うことができた。

きり丸のこうした姿を見るのは何度目だろうか。思い出そうとしたが、途中で数え切れなくなったので、あっさり止めた。きり丸は目を掛けている後輩だけれど、こういう姿を見てもべつにつらいとは感じない。自分はもしかしたら、けっこう冷たいのかもしれない。
ただ、金がないという理由で、こういうシゴトをせざるを得ないのは、哀れだと思った。

つらいと思っているわけでもないのに、こうやってきり丸が残した跡を追ってしまうのは、なぜなのだろう。上級生としての責任感に過ぎないのか、或いは単なる好奇心か。それとも、己はある程度裕福な家に生まれてきたということが、きり丸に対しては罪悪感になるからなのか。どれだったとしても、自分は最悪な人間だと思う。

まぐわいが終わるのを見届けもせず、長次は、夜道を一人歩いて学園に戻った。帰りがけに、落ちていた椿の花を一輪だけ拾って、懐に入れる。
長屋には戻らず、図書室に寄った。油皿に火を灯すと、積みあがった書物が小さな炎に照らされて、四方の壁に長い影をゆらりとたたえた。じっと床下に潜んでいた何匹もの黒い龍が、いっせいに鎌首をもたげたかのようだった。外から、文次郎と小平太が打ち合っている音と声が聞こえてくる。剣術の鍛錬をしているようだ。

長次は長机に頬杖をついて、書物を読むでもなく、何もせず佇んでいた。そうやっていると体が暗がりの中に溶けていきそうな気がして、何だか妙に心地良かった。

しばらくすると、何者かが廊下をこちらに向かって歩いてくる気配がした。少し経って、開き戸がさっと開いた。

「灯りがついていると思ったら、中在家先輩だったんですか」
そこには、きり丸が小さな手燭を持って立っていた。

「菜種油が勿体ないですよ。委員会の経費として計上されるんですからね。夜はとっとと部屋に戻って下さい」
きり丸はぶつくさ言いながら、図書室に入り込んできた。 先輩に利くものとは思えない口だ。他の上級生たちだったら怒るところだろう。
それにしても、さっきまで体を売っていたことなど、匂わせもしないところが見事だった。長次が見ていたかもしれないという自覚はあるのだろうか。

きっと、あるのだろう、と長次は思った。だが長次も長次で、それについて言及する気はなかった。

「お前は何をしに来たんだ?」
長次は帰りに使う自分の手燭に火をうつしがてら、顔を上げて、間近に寄って来たきり丸を見た。
その瞬間、彼の無表情は、凍りついたかのようにこわばった。
井戸水で洗って清潔にしてきたのであろう、上半身の着物を大きくはだけた体には、生々しいみみず腫れが痛ましげに、縦横に走っている。

「お前、その傷は…」
「すいませんね、服を着ると痛いもんで」
「そういうことを聞いているのではない」
それは明らかに、忍術の修行や授業でできるような傷ではなかった。

しばらく、二人の間にどろりとした沈黙が流れた。お互い何かを無理に押し隠そうとしている態(てい)の沈黙である。
沈黙を破ったのはきり丸のほうだった。

「先輩、見ていたんでしょ? さっきのおっさん、ちょっと変態趣味があったもんで。でもその分お代を弾んでもらったんで、まぁ悪い話じゃなかったですよ」

長次は黙り込んで、子どもらしからぬ完成された笑顔を一分の隙もなく浮かべているきり丸を、じっと見た。この子は結局何を伝えたいのかが、やはりうまく計れない。

「さすがにこの傷を晒して長屋に戻ったら乱太郎たちが心配するだろうから、一晩ここで落ち着けてから行こうと思ったんです」
きり丸の声には、悲壮さはなかった。ただときどき、自棄(やけ)を感じさせるものがこぼれ落ちることはあった。

「そういうことは…」
長次は一旦息を止めて、言う。「やめたほうがいい」。

自分の声が、これ以上はないというぐらいにしらじらしいものに感じられた。文次郎や留三郎だったら、後輩がこんなことを言い出したら、いきなりぶん殴ったりもするのかもしれない。自分がどこか冷めた気分になるのは、言うだけ無駄だという気持ちがあるからだろうか。それとも、自分は実際それほどまでには、きり丸のことを思ってはいないのだろうか。
するときり丸は今度は、戦ごっこの相手の陣地に生じた一瞬の崩れを突くときのような、あまりにも子どもらしい笑顔を浮かべて、言った。
「先輩、今、自分がどういう顔してるか、わかります?」
「顔だと……?」
「たぶん、先輩も自分では見たことのないような顔ですよ」
長次はきり丸が言おうとしていることがよく理解できず、思わず自分の頬に手を当てた。

「俺、知ってるんですよ、先輩」

それからきり丸は、長次がおそらくこれから先ずっと、忘れようとしても絶対に忘れられないであろう一言を……己の中に今までほのかに見出しながらも、決して目を向けたり認めたりしようとしなかったことを、軽々とお手玉をもてあそぶかのような調子で、さらり、と言ってのけた。

先輩はひどいことされてる俺が好きなんでしょ?
だったら俺はとことん、そーいう目に遭ってみせますから。

長次は、自分の中で張りつめ、均衡と保っていた力という力のすべてが、きり丸の言葉で崩れ、すぅっと体の外に抜けていったかのような気がした。
何だか、腹の底から笑いたくなった。
この状況を。そして、

そんなことをするな、とは言わない自分を。

観念したかのように、自嘲が色濃く滲んだ深い溜息をひとつ、腹の奥から吐いた。

「……だったら、私もとことん付き合ってやるぞ」
肩がふっと軽くなったのを感じた。長次は、たった今すっかり何の躊躇(ためら)いもなく動くようになった指先で、きり丸のみみず腫れをそっとなぞってみせた。きり丸の口もとに、またも子供らしからぬ、妖しげな笑みが浮かんで、整った顔全体がぱっとはなやいだ。

「勝負でもするか。壊れるぎりぎりのところで助けてやるから、思う存分やってみろ」
「余計なお世話です」

灯火の明かりが、きり丸の赤い傷跡を舐めあげるようにちらちらと揺らめく。長次はそれに倣うかのように、今度は唇と舌先を、そこに這わせた。
懐から白い椿の花が、ぽとり、と落ちた。生き地獄への、道しるべが。



------------------
さて、夜もとっぷり更けて腕枕談義の時間。
「ところで、私はさっき、どういう顔をしていたんだ?」
「それは、言わないでおいてあげますよ」
PR
この記事にコメントする
Name
Title
Color
Adress
URL
Comment
Pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
カレンダー
07 2026/08 09
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
プロフィール
ごんファイ
一. 文章を書いて生きています。
一. 日本史から入ったタイプなので、落.乱、忍.た.ま以外のアニメ、マンガ、ゲームの話にはついていけないことが多いです。申し訳ない!
ブログ内検索
メールフォーム
ご意見、ご感想などはこちらからお気軽にどうぞ!
Powered by NINJA TOOLS
最新CM
バーコード
アクセス解析